高気密高断熱の家を建てたら夏も冬も快適にすごせるのね。
お姉ちゃん、それは違うで。
なんですかあなたは!?
私は高高住宅を建てると決めたんですから、しょーもないポエムは聞きたくありませんよ。
確かに性能上げたら冬は快適になる。
でもな、夏の暑さはそう単純にはいかんのや。
夏涼しく、冬暖かい家に住めたら理想的ですよね。
高気密高断熱の家を建てれば快適な生活に近づきます。
しかし、夏涼しい家にするためには、冬とは違ったアプローチが必要になります。
この記事では、夏を涼しい家にするためのポイントを
”日射遮蔽” ”空調計画” ”湿度管理” という視点からお伝えします。
目次
ここに軒の出なし、6畳一間のシンプルなモデルを用意しました。
南面に大きな窓を設置しています。
そして、同じ間取りで無断熱と高断熱の2つのモデルを用意し、比較をおこないます。
無断熱の家と高断熱の家。
夏に涼しいのはどっちやと思う?
高断熱の家が涼しいに決まってますよ!
ビバ高断熱!
真夏日の室温シミュレーション結果です。
寝苦しい深夜3時、無断熱住宅は外気温に近い温度ですが、高断熱住宅は異常な高温を保ってしまっています。
そ、そんな!
高断熱なら快適じゃなかったんですか!?
高断熱の家を建てることは間違ってへん。
でもな、無計画な高断熱化は夏にとって要注意なんや。
なぜ高断熱住宅の方が室温が高くなってしまったのでしょうか。
その答えは日射熱にあります。
冬は室温をあげるため味方になっていた日射熱が、夏には大敵になります。
窓から入ってきた日射熱は室温をドンドンあげていきます。
無断熱住宅は、上がった室温は外気へとすぐに出ていきますが、高断熱住宅は、熱を室内に閉じ込めてしまうのです。
せっかく日射取得を考えて冬が快適になったのに、夏だと逆効果なんですね。
心配せんでもええ。
ちゃんと日射遮蔽をしてあげればええんや。
近年は軒の出がゼロのデザイン住宅を多くみかけますが、軒の出には重要な役割があります。
軒先で日射を遮蔽しちゃったら、冬が寒くなるでしょう!?
大丈夫や。
軒の出の長さを調節することで、
夏は日射を遮蔽するけど冬は取り込むってことが可能になる。
太陽の高度は季節によって変化します。
夏至が最も高度が高く、冬至が最も低くなります。
その性質を利用し、太陽熱の入射角を計算し最適な軒の出を設計することで、
夏は日射熱を遮蔽、冬は室内に取り入れることができます。
なんて素敵なんでしょう。
なんだかいい言葉が思い浮かびました。
”太陽に素直な家”
そう呼びませんか?
名前なんてどうでもええわ。
軒の出の最適化はバリ有効や。
でもな、軒の出による日射遮蔽が効くんは真南の面だけやわ。
そんなあ。
”太陽に素直な家”を建てても、太陽が全然素直じゃないじゃないですか。
軒の出による日射遮蔽はとても便利です。
しかし、真南から東西に振れれば振れるほど効果が薄くなります。
斜めから入ってくる太陽熱は軒の出では防ぐことができないからです。
ですので、軒の出を有効活用するためには大きな開口部を真南に向ける必要があります。
いつだって真南に大きな開口部を作れるわけじゃないでしょう?
それに南面以外の窓はどうするんですか?
その通りや、いつも理想的な敷地ばかりやない。
軒の出が効かへんとこに大きな窓を付けるなら、シェードを使っていくんや。
敷地の条件によっては、家を真南に向けることができなかったり、東西面に開口部を設ける必要があります。
その場合は、すだれやアウターシェードなどで窓の外部で遮蔽します。
シェードを付けなくても、室内にカーテンをつければ問題ないと思われるかもしれません。
ですが、日射は窓の外部で遮蔽しなければ室内への熱の侵入を許してしまうのです。
日射は窓の外側で遮蔽する必要があります。
シェードで日射遮蔽すればいいのは分かりました。
けど、全部の窓にシェードを設置なんてしてられませんよね。
シェードをつけるのは大きい窓で日射の侵入が予想される箇所だけや。
シェードの設置を最低限にするためには、
設計段階でしっかり日射遮蔽の検討をする必要がある。
日射遮蔽は設計の段階で検討し、シミュレーションを重ねて仕様を決定しないとうまくいきません。
あちこちにシェードを付けていたら費用が高額になり、上げ下ろしする手間もかかります。
日射遮蔽を考慮した設計で大切なポイントは以下の通りです。
多くの住宅では不必要な窓が多数設けられてきました。
1部屋に引違窓を2方向というのがテンプレートになっています。
もちろん、採光を期待するための窓、豊かな景色をのぞめる窓は設置すべきです。
しかし、隣家の外壁が見えるだけの窓など、不必要な窓はない方が良いのです。
窓の設置は目的を明確に、大きな開口部と小さな窓、メリハリをつけて設計していきます。
結局どうすればいいのかよく分かりません。
マエショウさんにお願いしたら大丈夫なんですか?
もちろんしっかり日射遮蔽の設計はするで。
でも、どこに窓が欲しいかはお客さんがどう住まいたいか次第や。
綿密にコミュニケーション取りながら仕様を決定していくで。
十分に日射を遮蔽することに成功すれば、エアコンが効きやすくなります。
一度室内を冷やせば、高断熱の恩恵で冷気を長く閉じ込めておくことができます。
また、夜中に冷たい空気を取入れておき、日中に冷気を持ちこすことも可能になります。
高断熱住宅で夏を涼しくすごすためには、適切な日射遮蔽が何よりも大切です。
結局エアコン頼みなんですか?
それじゃあ今の生活と変わりませんね。
エアコンはエネルギー効率がぴか一の冷房器具や。
それに、強引にガンガン冷房するわけやないで。
エアコンの特性を知り尽くした人間が設計すれば、
小さなエネルギーで家中快適にすることが可能なんや。
いくら効率が良くても、
エアコンの冷たい風って苦手なのよね。
俺は全然平気やけどな。
エアコンの直風が苦手な人が多いのは分かっとる。
もちろん、そうならんように計画させてもらうで。
エアコンからの冷気を直接受けると不快に感じる方は多いです。
そこで検討されるのが、全館空調システムの導入です。
安定した気流で家中快適な温度を保つことができます。
高性能な全館空調を取入れれば、確実に快適な環境が手に入るでしょう。
しかし、高性能な設備はその反面、システムが複雑であるためデメリットがあります。
初期費用だけでなく長期的なコストで検討する必要があります。
コストに納得できる場合は、確実に快適性を担保できる方法ですので、
全館空調の導入を積極的に検討してもいいでしょう。
全館空調!
憧れるわ~。
でも、うちの予算じゃとても手がでません。
将来的に追加でかかる費用も不安だわ。
心配せんでもええ。
確かにマエショウでは大手みたいな立派なシステムは導入でけへん。
けどそんなん使わんでも、シンプルな方法で同じくらい快適にすることは可能や。
高気密高断熱住宅の宣伝文句として「エアコン1台で全館冷房可能」というのをよく見かけます。
確かに、HEAT20 G2レベルの断熱性能があれば、冷房負荷の計算としてはエアコン1台で十分まかなえます。
しかし、そうした計算にはある重大な前提条件が隠されています。
それは、「冷気が均一に瞬時に行きわたること」という条件です。
ここで下記のモデル住宅でシミュレーションをしてみます。
2階建て120㎡
UA値0.33[W/㎡K]
隙間なし
第三種換気
東京
2階ホールにエアコンを設置し、盛夏に25℃設定で24時間稼働させました。
結果はご覧の通り。
エアコンの容量は足りているにも関わらず、半分以上の部屋が30℃以上になってしまっています。
Ua値0.33でこんなに暑いんですか!?
やっぱり各部屋にエアコン設置するしかないんだわ。
高気密高断熱ってだけじゃうまくいかんのや。
冷気の流れをちゃんと考えてあげやなあかん。
冷気というのは思っているよりも家の中を移動しません。
間仕切り壁やドアによる隔たりが多ければなおさらです。
家が建ったあとで空調をどうするか考えているようでは遅いのです。
設計段階から空調計画を建てなければ快適な空間は作れません。
なるべく空気の通り道を確保することが基本となりますが、
寝室など、ドアを閉じる必要のある部屋が多いほど計画は難しくなります。
大抵はガラリや循環ファンを設置することで解決可能です。
しかし間取りや生活スタイルによっては、エアコン2台やダクトを利用した空調方法をご提案することもあります。
エアコン1台にこだわりすぎて、理想の家とかけ離れてしもたらしょーもないで。
希望するプランに一番適した空調方法を提案させてもらうわ。
私にはもう分かりません。
マエショウさんにお任せしたらいいんですか?
任せとき。
でもな、まだ湿度管理っていう大事なもんが残っとるで。
湿度なんてエアコンつければ乾燥するでしょう?
エアコン=乾燥ってイメージがあるけどな、
実はエアコンは除湿が苦手なんやで。
夏に快適に過ごすために、湿度管理は重要です。
湿度が60%をこえるとカビ・ダニが繁殖しやすい環境になります。
湿度が低いほうが体感温度が下がるため、強い冷房をかけなくても快適に過ごせます。
ですので、家中の湿度が常に60%以下になるように管理するのが目標です。
ですが、ほとんどのエアコンには湿度設定の機能がありません。
確かにエアコンを冷房、もしくは除湿運転すれば乾燥するのですが、
どの程度乾燥するかというのは、実は成り行き任せなのです。
そういえば湿度設定のボタンって見たことないわ。
それなら除湿器を買えばいいんじゃないかしら。
確かに、除湿器ならもっと確実やな。
でも、できれば避けたい選択肢なんや。
除湿器を設置すれば湿度管理はずいぶん簡単になります。
しかし、除湿器はデメリットが大きいため最後の手段と考えています。
何リットルもあるタンクをしょっちゅう捨てるなんてムリ。
理想的なのは、エアコンを使って湿度管理をすることです。
エアコンでの湿度管理のためのポイントは以下の通りです。
エアコンの除湿はコンプレッサー式といい、キンキンに冷やした熱交換器で湿った空気を結露させ、乾燥させた上で空気を部屋に戻すものです。
ですので、たくさんのエアコンを稼働させていると、各エアコンの熱交換器を十分冷やすことができずうまく除湿できません。
少ないエアコンに頑張ってもらい、熱交換器をキンキンに冷やすことで除湿量を増やすことができます。
エアコンの除湿方式では、必ず空気を冷やしてしまうというデメリットがあります。
盛夏の時期であれば一石二鳥で問題ないのですが、暖房も冷房も不要な中間期では冷えすぎて不快になる可能性があります。
特に奈良県は全国的に見ても3,4番目に年間平均湿度が高い地域ですので中間期の除湿が必用です。
そこで、再熱除湿という冷やした空気を温めなおして部屋に戻してくれる方式があります。
その分、電気代は高くなりますが湿度の高い温暖地では採用しておいたほうがよいでしょう。
1台でのエアコン運用に失敗する主な原因として、サーモオフがあります。
エアコンは設定温度の達すると、当然ながら自動で運転を停止します。
これがサーモオフです。
狭い空間にエアコンを設置すると、すぐに設定温度に達して停止してしまいます。
これでは全館を除湿することはできません。
ですので、エアコンの設置場所は開けた場所にする必要があります。
十分に除湿計画を建てた後は、実際に運用してみて季節ごとの設定を調整をする必要があります。
湿度のモニターに有用なのがみはりん坊Wという製品です。
相対湿度はもちろんのこと、絶対湿度を計測できますので、のどの乾燥対策にも使えます。
エアコンって畳数表示だけ見てればいいと思ってました。
いろいろと考えることがあって複雑ですね。
もうエアコン選びと設置場所はお任せします。
もちろん最適なエアコンの選定と設置場所の決定、
運用方法のアドバイスまでさせてもらうで。
でもな、ある程度は計画段階で見通しはつくけど、
引渡し後にモニタリングして調整は必要や。
お姉ちゃんにも協力してもらわなあかんわ。
ええ!?
任せっきりじゃだめなんですか?
できるだけ手間を減らしたいんなら、
確実性の高い方式にせなあかんからちょっと高くつくで。
楽やけど高い、安いけど大変、世の中の摂理やわ。
全館冷房除湿の方式には主に以下の3パターンがあります。
2番は小屋裏エアコンが有名やな。
実をいうとまだ施工実績はないんやけど、
有名な先生の指導受けとるから安心してくれ。
詳しく説明すると大変やから先生のYoutubeを見るとええわ。
引用:建築知識ビルダーズ48 賢くムダなく高性能!松尾式住宅設計術 p.143
3番のダクトなしの冷房についてはさっき説明させてもろたけど、
もっと詳しいブログを紹介しとくで。
巷ではF式全館冷房って呼ばれてるらしいな。
挑戦してみたいって人は遠慮なく言ってくれ。
全力で計画と運用サポートさせてもらうわ。
夏の対策は冬とはまた違った難しさがあるんですね。
夏も冬も快適な家に住みたいのでもう少し勉強します!
夏を涼しくすごすためのポイント
1.徹底した日射遮蔽
2.空調計画の策定
3.湿度管理
しっかりと暑さ対策をして夏も快適な家を建てましょう。
より詳しい説明を聞きたい方は、
「資料請求」、もしくは「見学会」へのご来場をよろしくお願いします。
最後まで記事をお読みいただきありがとうございます!
設計・WEB担当のこばやしです。
シミュレーションを駆使した温熱設計が得意です。
日々、高性能な家づくりについて知識をブラッシュアップしています。
Twitterを頻繁に更新していますのでぜひ見にきてください。